速い男はブレーキ勝負、もう一度F1でマイケルが見たかった

もう昔の話だけど...ワールドF3選手権に全日本F3000そして世界耐久シリーズのメインレースたるルマン、俺は彼と3回戦った。それに、少しだけど自分は年長なので親近感を持ってワールドチャンピオンとなったミハエルシューマッハ選手を誠に恐縮ながら個人的にマイケルと呼ばせてもらってます。

お客様が「面白い本を見つけたよ」とある本を持ってきてくれました。それはAUTOSPORTSから別冊として出版された「日本の名レース100選」という本だった。そこにあったのは、20年前の自分。ライバルは世界から集まった若武者60人のF3ドライバー。個人的にもとても印象に残るレースでした。さすがイデアの三好さん、ベストチョイス!いつも素晴らしい本をありがとうございます。※エントリー台数が多く、表示があまりにも小さくなったので、クリックで拡大してボクを見つけて下さい!

レーシングテクニックの基本中の基本であり、最も難しいのがブレーキングだ。何故ならば、時速400km/hに迫る超高速からコーナリングアプローチ限界速度まで最短時間に減速、またあるときは6速全開の高速コーナー中における不安定な姿勢でのコントロールブレーキ。最も痺れるのは、ウオータースクリーンで前方視界がほぼない、しかも、路面は常時変化する危険極まりない状況の中でのバトル、つまりはブレーキング競争勝負だ。とくに、フォーミュラーマシンはダウンフォースを得る為に高速走行が常に求められる乗り物、嘘と思うかもしれないが100km/hでコーナーを抜けるより200km/hの方がクルマを押し付ける力が空力的に高まり、相乗的にタイヤ温度も上げられるので、コンディションによっては安定性が高まり、コーナリングがスムーズな場合が有り得るからだ。難しい局面では本能的な能力差が出るということだ。

そんな、ブレーキングテクニックの差も、機械の能力差とは人間の能力では埋められない差が技術の進化と共に常に存在するものだ。今では、GTRやフェラーリといった限られた市販車にも採用されているカーボンブレーキも、90年代初頭に開発された技術。自分的にもプロトタイプマシンで初めて乗った時は、あまりの制動力にそれまで感じたことのない筋肉痛を首に感じたほど。当時は活動予算の豊富な一部のチームのみが使用していた特別な部品だった。

機械的な技術革新の最中にあって、ブレーキングといえば一歩抜きに出る才を当時から見せていたマイケル。F3でハッとさせられ、ルマンではリスクの高い名物コーナーとされているインディアナポリスへのアプローチで「そこまで攻めたら曲がれないでしょ」と思わせたのは、やはり彼だけだったな。

予選を通過できたのは半分、熾烈な戦いが繰り広げられた。自分も決勝レースへ進んだものの、序盤にアクシデントに巻き込まれ中段グループに沈んだ。あのハッキネンですら予選ヒートでクラッシュ。でもマイケルは別格、タフなレースを見事に制した。興味深いのは、このエントリードライバーの中からその後11名のF1ドライバーが誕生していることだ。
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それだけに、テクニックはもちろんのこと機械としてのブレーキへの性能には自分としては拘りがある。それは、ブレーキフルードに始まり、ホース、キャリパーにパッド、ローター。どれも非常に重要な要素となる。たとえばフルードに求められる要素には、対フェード性が一般的。しかし、実際はその流動性、つまり液体としての硬度の安定性こそ重要視されるべきもう一つのポイントだと思う。硬度の沸点が仮に高くても、軟化し易いフルードは、ペダルストロークが大きくなる傾向があるので、長丁場のレースでのブレーキに影響するのだ。もちろんホースも耐圧性が求められるし、ローターにいたっては部品としての耐久性が安全性に大きな影響がるあるだけに、安定した性能を発揮させる為、冷却システム、ドライバーのコントロールなどが消耗に大きな影響が出るシビアな温度管理が要求される部品ともいえる。また、キャリパーは、高熱での耐久性とペダルフィールとパッドの消耗、そして軽量であることなど複雑な要素が絡むのだが、コストは土返しにすると究極のクオリティとなる鍛造削りだしであることがボーダーラインとなる。さらに、パッドの制動特性はドライバーの好みが唯一反映される部分となるが、これも速いドライバーの選択は共通してくるもの。それは、微妙なスピードコンロールを可能とするリニアリティだ。

自社ブランドのブレーキシステムの開発には、なにくそ~!マイケルには負けない...それが根底にある。ただ、ダストレスパッドは品質管理レベルの高いISO基準の工場で作っているので問題はありえない、スポーツモデルもオールマイティであることを念頭にフルブレーキング時に影響が出る車両別に微妙にセッティングが異なるABSやアンチスキッドコントロールといったデバイスとマッチングを最優先に調整し、初期制動をやや高めに振ると評判はいい、こういった微調整はオレカの特異な分野。もちろん、ローターへの攻撃性や消耗といった経済性は外せないポイントとしている。だが、最も頭を悩ませるのは、レーシングスペックの設定。何故ならば、1/1000秒を争うとなると市販のクルマをベースにするサーキット走行ほど車両へのストレスが大きいからだ。例えば、初期制動=ペダルタッチ時のリアクションの速さを追及すると、ローターへの攻撃性は高まる傾向があり、システム温度も上がりやすくなるので、フェードが発生しやすくなるし、コーナリング中の微妙なスピードコンロールは難しくなる。速いプロドライバーはショートハードに攻め、コーナリング中のコントロール性を重視する傾向にある。だが、高速からのブレーキングで安心感のある初期制動感の高いスイッチ的なブレーキを好むビギナーが多いことも事実。少しレースをかじった○○ドライバーは、要はスピードレンジの異なる走りをするマイケルが選択したパッドでは効かないと感じるということだ。

数えきれないほどのレースで、そして様々な厳しい条件の中で常に限界ぎりぎりのブレーキコントロールを求められてきた経験。これこそがブレーキシステムの開発に最も役立っていると思う。新たに開発したモノブロック6ポッドキャリパーは、俺の足つぼを快く刺激するペダルフィール=誰にでも簡単に操ることが出来るコントロール特性を実現、自信作です。

さらには、耐久性といった側面からすると、冷却システムの有無とその効果。メンテナンス、最も重要なのはドライバーの乗り方による温度管理の環境だ。また、それぞれの部品が様々なメーカーの寄せ集めとなると、テスト走行をして適正を計る必要ことが絶対条件となる。というのも、温度管理を誤ると、どれほどタフなフルード、ローター、パッドそしてキャリパーであっても悲鳴を上げる。要は使い手側の知識、テクニックがトラブルを未然に防ぐ最も重要なファクターということなのだ。簡単にはいかない問題だが…

こういった条件を考慮しながら安全、そして最速のアマチュアドライバーの為に最良なブレーキパッドを作ることを開発の課題となる。とはいえ、基本は製造技術、設備だ。ブレーキパッドは最低限のノウハウがあれば、そこそこのものはどこでも出来る。しかし、劣化の早い材料の品質管理、強大なプレス、レベルの高い製造炉といった最新鋭の設備の有無は、ユーザーの目には見えにくいが、実際は性能に大きな差が出るもの。だが、スピードはもちろん、安全性の確保にもブレーキは走りの要となる。それだけに良い物を選び、使ってほしいと思う。オレカが自社ブランドで全てのブレーキパーツを開発しているのは、膨大な走行試験データを蓄積し、それをベースにクルマ、走行条件に最適のブレーキを作りたいのです。

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