近年、発表される新車の中にクーペボディを纏う純粋なスポーツカーを見ることはかなり稀なことだ。ほとんどが、大量生産されているセダン、ハッチバックをベースにしたスポーツモデルで、サスペンションやエンジンをチューング。ルックスをモディファイして特別な一台として差別化されているに過ぎない。それでも、歴史のある正統派ブランドもあり、走りを楽しめるクルマもいくつかある。
だが、スポーツカーとして専用設計されたクルマの持つ世界とは、特別な領域であり、ハイレベルな動力性能はもちろんのこと、重量配分、空気抵抗を強く意識した華麗なデザインによる存在感の大きさは最大の魅力ともいえるだろう。
そんな希少なスポーツカーにあって、最近チューニングの素材として注目したのがアルピーヌA110だ。僕が初めてニューアルピーヌのステアリングを握ったのは3年ほど前だが、その時の印象は、ラグジュアリーなスポーツクーペといった感じで、サスペンション、エンジンといった部分に特別なパフォーマンスを見ることはできなかった記憶がある。しかし、久ぶりに乗ったアルピーヌは、大いなる進化を遂げていた。パワーアップされたエンジンもさることながら、強化されたというサスペンションのダンパーセッティングの素晴らしく、ピッチングを上手くコントロールしていることもあり、高速走行では、柔らかいはずの標準仕様よりも快適性が高いように感じた。
オレカでは、ボディ補強をはじめアルピーヌのチューニング部品を開発しているが、その目的は、このバージョンアップされたスポーツ仕様のようなハンドリング性能であった。ライトウエイトスポーツの真骨頂たる走りを見せてくれた初代のA110を走らせた記憶があるだけに、リバイバルしたA110にも、やはり切れのあるハンドリングがほしかったのだ。
内燃機関を搭載する自動車の未来はそう長くはないことは周知の事実。それだけに、研鑽を遂げたアルピーヌのようなクルマの存在が、余計気になるのかもしれない。